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デジタルDJ環境の話 2010

ターンテーブル3台によるアナログDJ環境をやめ、Traktorを用いたデジタルDJ環境になって早2年半。この2年半の間にデジタルDJの良さ、悪さが理解できてきたため、再度まとめなおそうと思います。ここで比較対象とするデジタル、アナログDJ環境は以下の通りです。

■対象とする環境
・ジャンル
 ・テクノ
・デジタルDJ環境
 ・DJ用ソフトウェアはTraktor.
 ・デジタル音声フォーマットでHDDの中に格納。
 ・4 decks.
 ・Syncボタンにより楽曲のBPMをあわせるて混ぜる。
 ・ミキサーはソフトウェアではなく外部ミキサーを使用。
・アナログDJ環境
 ・ヴァイナルをレコードボックスに格納。
 ・3 decks.
 ・伝統的なやり方にてピッチを合わせ、楽曲を混ぜる。

■デジタルDJ環境を選択した際のメリット

・楽曲の保管と検索が楽
これが一番大きいメリットでした。HDDなど、データ保存用メディアに音声ファイルが保存できるので、部屋がレコードで埋もれることがなくなりました。また楽曲の整理整頓もとても楽になりました。あの曲どこにやったっけ・・・といのもCtrl+Fで一発解決。

・楽曲を手に入れるのが楽
ヴァイナルはタイミングを逃すと本当に手に入れるのが難しいですが、音声ファイルは品切れを気にしなくてもいいのが大きいです。また、わざわざ店に出向かなくても画面操作ひとつで楽曲を手に入れられます。試聴の手間も少なく、ヴァイナルよりも多くの曲を聴くことができます。(フルレングスで聴けるオンラインショップは少ないですが・・・。)楽曲単位で購入できるため、ほしい曲が安く手に入るのも良いです。そして、テクノクラシックも容易に手に入れることができます。

・多様な音源を利用できる
これはCDJでも同じですが、CDでしか出ていないような一般的な音源を利用することができます。また、デジタル専門でリリースするレーベルも、とても多くなってきました。

・ピッチ合わせが楽
これはすごいです。TraktorのSyncボタンを押せば、それだけで楽曲のピッチはほぼ同期します。ピッチを合わせる行為に愛着がなければ、もはや実施する必要はないのです。私はピッチ合わせの作業がなくなったので、4デッキ使って音を混ぜる作業に没頭することができるようになりました。(最後にぴったりピッチを合わせる際の微調整のスキルが必要なので耳は鍛えないといけないですが。)

■デジタルDJ環境を選択した際のデメリット
明確なデメリットはあまり無いように感じますが、例えば、以下のようなことは挙げられると思います。

・音声ファイルロストのリスク
やはりデジタルDJ最大のデメリットがこれでしょう。今は2台のHDDに音声ファイルをコピーしていますが、両方のHDDが壊れて音声ファイルがロストするなんて、ありえる話です。かといって安定したメディアにデータを移すのも手間がかかる。難しい話です。

・マシン不具合に関するリスク(12/17追記)
デジタル機器に不具合はつきものです。出先で突然動かなくなった、故障した、という可能性があります。一方でヴァイナルはターンテーブルさえあれば音を出すことができます。こういったリスク面を考えると、ヴァイナルの安定性のほうが抜きん出ていると言えます。

・ヴァイナルに手で触れる各種テクニックを使いにくい
フルデジタル環境ではバックスピンやスクラッチはできないので、コントロールヴァイナルを導入する必要があります。また、コントロールヴァイナルを導入してもレイテンシーの問題があり、やはり違和感はあります。

・レコードのみでリリースされる音源に気付き難い
白盤や匿名性の高い盤はデジタルリリースされないことが多く、レコードのリリースをチェックしなければ、そのような音源を見逃すことが多いです。

・オリジナルなデジタル音源が存在しないテクノクラシックはまだまだとっても多い
テクノクラシックのうち、デジタル音源化されているものはほんの一部です。そして、すでにデジタル音源化が望めないレーベルもたくさんあります。そのような音源はレコードから取り込むしかありません。

■アナログDJ環境を選択する意義
デジタルDJ環境を選択するデメリットが殆ど無い以上、少なくともテクノDJについては、ヴァイナルへの強い愛着がある人以外は、アナログDJ環境を選択するメリットはないかと思います。

一方、ヴァイナルへの強い愛着がある人はアナログDJ環境を選択することにより、エモーショナルな価値を得られるでしょう。新しいヴァイナルに針を落とすときの興奮、針が溝を擦るときのノイズの心地よさ、ジャケットのにおい、苦労して入手したときの喜び、ヴァイナルに手で触れる実感、ミックス時にピッチがずれていくドキドキ感など、デジタルDJ環境には存在しない価値がそこにはあります。(しかし、未来に現れるであろう純粋なデジタルネイティブ世代にとっては、持つことのない価値観になっていくでしょう。)

■音質の差異
ヴァイナルの物理的特性があるため、マスタリングの仕方がデジタル音源とヴァイナルでは異なっていることが多く、デジタル音源のほうが低音域、高音域がはっきりと出る傾向にあります。これは好みの問題かなと思います。また、クラブでの聞こえ方については、クラブのPAがヴァイナルにあわせてあれば、デジタル音源の音が耳に刺さってきますし、デジタル音源にあわせてあれば、ヴァイナルの音がこもって聞こえることになるでしょう。

■最後に
デジタル化とは、アナログ世代が持つエモーショナルな価値とトレードして、効率を手に入れる行為です。エモーショナルな価値と効率を天秤にかけて、後者が重要ならばデジタル化に踏み切るのが良いと思います。私はデジタル化によって効率を手に入れたことにより、日々忙しくなっていく中でも、テクノを聴く生活を続けることができるようになりました。

既にデジタルDJ環境はアナログDJ環境の代替たり得る機能を獲得しました。効率に関する諸問題を抱えている人は、デジタルDJ環境に舵をきっても良いと思います。楽曲の入手コストが低いので、デジタルDJ環境をそろえるのにかかったコストは、半年~一年程度でペイすることができるはずです。

これからDJ環境をそろえようと考えている方については、デジタルDJ環境を選択したほうが良いのではないかと思います。そして、アナログ的価値観を重要と考える方については、それはとても大切な価値観だと思います。新たな世代が持たない武器として、ユニークなものとなるのではないでしょうか。

Live at Hecatomb (24 July 2010) Tracklist

実は7/24(土)夜にヘビーシックゼロでDJしてました。トラックリストの要望があったので下記に書いておきます。

  1. Ryoji Ikeda - Into The Tranquility [CCI]
  2. Chris Liebing - Auf Und Ab (Edit Select OCD Remix Part 1) [CLR]
  3. m0h - Se7en (Gary Beck's Scene Take 1) [Touched]
  4. Mount Kimble - Vertical (SCB Edit) [Hotflush]
  5. Alan Fitapatrick - Blocked Up [Drumcode]
  6. Adam Beyer & Alexi Delano - Sleep Horn [Drumcode]
  7. Peter Van Hoesen - Irrational X [Exone]
  8. Chris Liebing - Auf Und Davon (Zahn & decimal's Slow Burner) [CLR]
  9. Terence Fixmer - Drastic (Planetary Assault Systems Remix) [Electric Deluxe]
  10. A. Mochi - Through The Never [Figure]
  11. Little Nobody - Metropolis How? (James Ruskin Remix) [Gynoid Audio]
  12. Flug - Facter AG (Pfirter Remix) [Sleaze]
  13. Daniela Stickloth - The Slot (Xhin Remix) [LINEAL]
  14. Jerome Sydenham - On The Run [Apotek]
  15. Adam Beyer - Filthy Lobster [Drumcode]
  16. Alan Fitapatrick - Alpha Scanner [Drumcode]
  17. Ben Sims - Hypnosis [Drumcode]
  18. The Martian - Stardancer [Red Planet]
  19. Miki Litvak - Pollinator (Gary Beck Remix) [Punch]
  20. Slam - City Destroyer (Alan Fitzpatrick Remix) [Paragraph]
  21. Samuel L. Session - Inner City Dust (Part 2) [Figure]
  22. Planetary Assault Systems - X Speaks To X [Ostgut Ton]
  23. Jeff Mills - The Bells (Festival Mix) [Purpose Maker]
  24. DJ Shufflemaster - Slip Inside You [Tresor]
  25. Planetary Assault Systems - Temporary Suspension [Ostgut Ton]
  26. Tommy Four Seven - Surma (Speedu J Dub Tool) [Electric Deluxe]
  27. Gaiden - Point Blank (Speedy J Remix) [Music Man]
  28. Marcel Fengler - Sculptures [Mote Evolver]
  29. Speedy J - Armstrong [CLR]
  30. Surgeon - Klonk 3 [Dynamic Tension]
  31. Zomby - Strange Fruit [Ramp]
  32. CJ Bolland - Mantra [R&S]
  33. Carl Craig - At Les (Christian Smith's Tronic Treatment Remix) [Tronic]
  34. Jahcoozi - Read The Books (Ikonika Remix) [Bpitch Control]
  35. Ital Tek - Topaz [Atom River]

多分これで正解。

地下ミニマル特集

地下ミニマル特集です。インダストリアルディープミニマルとでも呼べばいいのかしら。下記はBeatportへのリンクです。
今後のシーンの方向性に影響を与える人たちだと思います。



どこまで範囲を広げるか迷いましたが、ひとまず以上です。


 

次世代ハードミニマル

最近のミニマル(主にハードグルーヴ界隈)の流れについて、頭が整理できたので書きます。(3/30追記)本記事の対象範囲は以下の図の通りです。

hardminimal_ng00.png

下記記事を参照します。

2009年ハードグルーヴ~ミニマル界隈雑感
http://keif.blog46.fc2.com/blog-entry-155.html

上の記事で、最近のハードグルーヴ界隈の音は大きく三つに大別できると書きました。以下に再掲します。

  1. Dubfireを頂点とするMinusレーベル寄りのゆるいミニマル派。
  2. Drumcode/CLRを中心とするダビー硬質ミニマル派と、その源流としてのOstgut Ton/Blueprintレーベルを初めとする、ハードミニマルへの再アプローチ派。
  3. UmekやChristian Smithをリーダーとし、プログレッシヴハウスを取り込みつつあるイタリアンミニマル派。


「音数」と「音の硬さ」という軸で考えると、上記の流れが捉えやすいことがわかりました。上記1, 2, 3はこれ以降の図に表れる(1), (2), (3)に対応します。

2005~2006年に起きたことは以下のとおりでした。上記記事から引用します。

1990年代中期以降に主流となってきたハードミニマル・スタイルが様々な要素を取り込みながらどんどんと拡大・発展していきましたが、その表現形態も 2004年前後には飽和してきて、ハードミニマル・スタイルの延長にて新たな表現を獲得することは困難を極めていました。そんな中、ディープミニマルの延長として、ドイツを中心に発生したミニマル・スタイルと融合が始まり、さらなる進化が始まったのは自然な流れだったと言えます。


図で表すと以下のようになります。

hardminimal_ng1.png

ドイツを中心に発生したミニマル・スタイルに引っ張られることによって、「音の硬さ」はぐっとソフトな方へ向かい、「音数」は少ない方へと向かいました。(同時に「BPM」も低いほうへ向かいました。)

2007~2008年は多数のコンポーザがスタイルを変革し、その中で自らの新たなスタイルを確立していった時期であり、全体的に混沌としていました。BPMを落としたことにより、表現に対する制約事項が減り、トラックひとつひとつが多くの要素を有するようになりました。それにより曲同士の親和性は高くなり、DJは様々なスタイルを取り入れていきました。(そのせいで、どのDJも同じように聞こえる、という事態に陥っていましたが。)

hardminimal_ng2.png

2008~2010年には、膨らんだ(1)の風船が破裂し、2つの流れが顕著になってきたように見えます。下図に示します。

hardminimal_ng3.png

図で示すとおり、「音数」と「音の硬さ」という軸で考えると、(2)も(3)も、(1)と比較して、旧来のハードミニマルに近づいていると言えます。「BPM」という軸を持ってくると、それは依然として低いままではありますが。

また、最近は、旧来のスタイルを貫いてきていたコンポーザの一部が以下の図のような流れで(2)や(3)に流入して言っているのが興味深いです。

hardminimal_ng4.png

今後の流れについては、以下のAやBのようになると思っています。

A. 各スタイルが融合して旧来型のハードミニマルに帰着する。(ただしBPM軸はずれていて、旧来のものよりも遅い。)

hardminimal_ng5.png

B. 「音数」や「音の硬さ」とは別の軸が発展し、それぞれ別の方向を目指す。

hardminimal_ng6.png

最初の図のようなドラスティックな変化は、あと数年(3~5年くらい?)はこないのではないでしょうか。表現形態が飽和していないので、まだまだ幅は広がると思います。

以上、(2)や(3)のようなスタイルの音をクリックと呼ぶのには、もう既にそぐわなくなっている。もうそろそろハードミニマル、次世代のハードミニマルと捉え、そう呼んでもいいのではないかというお話でした。

これだけで終わるのも何なので、次回は(2)をもうちょっと細かく分解してみようと思います。(3)はあまり詳しくないので、これ以上は勉強しないと無理かなあ。(自分のスタイルがぶれてしまうので、なるべく避けてます。)

Happy New Year!

Happy New Year!
Hope this year will be a wonderful year for you !

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Keif (gomma)

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