5015: Sesame & Strawberry

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2009年ハードグルーヴ~ミニマル界隈雑感

 本記事ではハードグルーヴという言葉を、旧来のハードミニマル、ハードテクノの流れを汲む一連のシーンを表す語として使用しています。また、ミニマルという言葉はドイツから発生した、いわゆるクリックテクノの流れを汲む、音数の少ないディープな音を表す語として使用しています。この文章は、ハードグルーヴ視点から近年のミニマル化の流れを追うものとして書いています。




 2005~2006年は変化の年、2007年~2008年は多様化の年であったのに対し、2009年はシーンの新たな方向性が徐々に定まってきた年でした。

 1990年代中期以降に主流となってきたハードミニマル・スタイルが様々な要素を取り込みながらどんどんと拡大・発展していきましたが、その表現形態も2004年前後には飽和してきて、ハードミニマル・スタイルの延長にて新たな表現を獲得することは困難を極めていました。そんな中、ディープミニマルの延長として、ドイツを中心に発生したミニマル・スタイルと融合が始まり、さらなる進化が始まったのは自然な流れだったと言えます。新たな表現形態を獲得した音として、2004年にMarco Carola - do.mi.no [do.mi.no]が、2005年にAdam Beyer - A Walking Contradiction [Plus 8]がリリースされました。

 ハードグルーヴシーンに大きな影響力を持つ2人のコンポーザーからリリース以降、ハードグルーヴ界隈のテクノのミニマル化が推進されてきましたが、2006年以降、多くのコンポーザーが試行錯誤しながら、これまでのスタイルを解体し、新たな進化を遂げてきました。新たなミニマル・スタイルの黎明期には試験的な音も多く、混沌としていましたが、2009年はこうした模索が、ある一定の方向性を獲得した年だと感じました。




 今年のトレンドは『ダビー』『ハード化』『ディープ化』でした。

 『ダビー』については、Radio SlaveやOstgut Tonレーベル発のトレンドである、ちょっとダビーなミニマルがChris Liebing周辺のハードな音作りに影響を与え、そこから周りへと影響が波及していき、徐々にハードグルーヴシーン全体のトレンドとなりつつあるようです。(Radio Slave自信はどんどんトライバルな方向へと進んでいますが。そういえば、Chris Liebingとその盟友Speedy JはRadio SlaveのレーベルRekidsからスプリット盤をリリースしていました(*1)。)この方向性の最たるものがOstgut TonよりリリースされたLen Fakiの盤(*2)かと思います。強烈なリバーブから、微かなリバーブまで、ハード系テクノの様々な音がダビーになっていたのが今年の特徴でした。

 『ハード化』に関してはUKのLuke SlaterのプロジェクトPlanetary Assault Systemsのスタイルが一番顕著でした(*3)。2005年前後では、ミニマル・スタイルに引っ張られて、一気にソフトな方向へと音の傾向が変わりましたが、2009年においては徐々に旧来の硬さを取り戻してきたと言えます。Planetary Assault Systemsの目指す方向性は、ミニマルを経由した後の、旧来の激しいハードミニマル・スタイルへの再アプローチであると言えます。Audio Assaultなどのハードミニマル・スタイルをかたくなに続けてきた人たちと融合して新たな方向性を打ち出そうとしているようです。

 ハードミニマルへの再アプローチの根底にはMarcel Dettmann主催のOstgut TonレーベルやSandwell DistrictレーベルやBlueprintレーベルなどUKバーミンガム周辺のダビーミニマルが存在しています。彼らの存在は、ハードミニマルへの再アプローチ以外にも、現在のハードグルーヴシーン全体に強く影響を与えています。多くのコンポーザーは、ハードでありながらも、より低いBPMを目指しており、この『ダビー』トレンドと相まって、全体としては更に『ディープ化』が推進されていると言えます。

 ところで、ハード化の推進に伴って、ベルギーのMarco Bailey, スロベニアのUmekなど、一時期エレクトロハウスへ行っていた人たちもミニマルへ回帰してきていますが、特にUmekが中心となった、上記ダビー硬質ミニマルとは別のもうひとつの大きな流れがあるようです。イタリア産ミニマルと、テクノ寄りプログレッシヴハウス勢との融合です。低音を分厚くグルーヴィーに作り込み、コロコロとリズミカルなパーカッションが乗っているのが特徴です。多数の新たなコンポーザーが流入してきている熱いシーンです。

 イタリア産ミニマルからはデジタルリリース中心で活動してきたItalo Businessレーベルを中心にPiattoやDandi & Ugo, Uto Karemなど、様々なコンポーザーが活躍しています。このスタイルはMark Knight主催のToolroomレーベルを初めとするテクノ寄りプログレッシヴハウス勢の目指す方向性と似ていることもあり、融合しつつあります。この接点にはエレクトロハウス路線からイタリアンミニマル路線にシフトしたUmekの姿があり、いずれの関連レーベルからも楽曲をリリースしています。この路線を理解するためにチェックするのが最も有効なレーベルがUmek主催の1605レーベルであるかと思います。

 これまで述べてきたダビー硬質ミニマルとイタリア産ミニマルと2つの大きな流れの接点にFergieやChristian Smithがいます。いずれの流れにもマッチするクセの少ない音作りが特徴で、楽曲は多くのDJに好んで用いられています。

 現在のハードグルーヴシーンを俯瞰すると、大きく3つに分かれていると思います。
  1. Dubfireを頂点とするMinusレーベル寄りのゆるいミニマル派(本記事ではあまり触れていませんが)。Marco CarolaやDavide Squillaceはイタリアンミニマル派ではなくて、こちらに属している感じです。
  2. Drumcode/CLRを中心とするダビー硬質ミニマル派と、その源流としてのOstgut Ton/Blueprintレーベルを初めとする、ハードミニマルへの再アプローチ派。
  3. UmekやChristian Smithをリーダーとし、プログレッシヴハウスを取り込みつつあるイタリアンミニマル派。



 『ハード化』の流れを最早押しとどめることはできません。一方でドラスティックな変革でもない限り、BPMは急激には変化しないため、低BPM傾向が続くと思われます。これらから、ハードグルーヴシーン全体としては、新たなテクノロジー、新たな表現形態を獲得した上での、低BPMでの初期ハードミニマルへの再アプローチが始まるものと考えられます。

 ミニマル化に伴って、特徴的なフレーズがなくなってきて、アンセム化する曲が殆ど無いようなシーンの現状でしたが、2009年は耳に残るような曲も現れてきており(*4)、再びテクノシーンからアンセムが生まれる日は、そう遠くない気がしています。低いBPMが主流になり、多くの制約から解き放たれたテクノが、初期の輝きを取り戻すときがくるのではないでしょうか。

 *1 Chris Liebing / Speedy J – Discombobulated / Klave [Rekids]
 *2 Len Faki – BX 3 [Ostgut Ton]
 *3 Planetary Assault Systems – Temporary Suspention [Ostgut Ton]
 *4 Anton Pieete – Be My Rescue [Intacto]

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コメント

はじめまして、こんにちは。
読ませていただきました。
こういう内容には興味がありました。
DJ的視点というか、とても面白いのです。

Re: タイトルなし

> はじめまして、こんにちは。
> 読ませていただきました。
> こういう内容には興味がありました。
> DJ的視点というか、とても面白いのです。
こんにちは!
今後もまったり更新していくので、どうぞよろしくお願いします。
最近ちょっとスランプ気味ですが…。

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